『三人の姉妹』 これはおとぎの国の物語。 母親を知らない三姉妹は、お父さんと四人仲良く暮らしていました。 シンデレラ・白雪・かぐやは美しく元気で明るい姉妹だったので、周囲の人からは姫と呼ばれ可愛がられていました。 そんなある日のこと。 シンデレラはいつものように、鼻歌を歌いながらダンスをするように掃除をしていました。 シンデレラ「ラララ〜♪」 クルクル、クルクル。 回りながら床を掃いています。 シンデレラ「ラララン〜♪ララ・・・きゃっ!」 【ガシャン】 どうやらシンデレラは箒を棚に引っかけてしまい、花瓶を落としてしまったようです。 かぐや  「何?今の音」 白雪   「シンデレラ?」 滅多にミスをしないシンデレラは、割れた音と二人が駆け込んで来たことに驚いて茫然としています。 二人の妹に同時に声をかけられ、はっとしたシンデレラは床を見てさらに驚きました。 割れた花瓶はかぐやが大切にしていたものだったのです。 いつもどこかから花を摘んで来ては飾っていたもの。 シンデレラ「ごめんなさい」 白雪   「あ〜!!」 シンデレラは素直に謝りました。そこで叫んだのは白雪。 大切にしている人形が割れた花瓶の破片と水の被害に遭っていたのです。 慌てて人形を拾い上げると、破片を落としハンカチで拭き始めました。 シンデレラ「ごめんなさい・・・ちょっとぼぉ〜としていたものだから」 白雪   「本当はまた、ダンスしながら掃除していたんでしょう?」 白雪にはっきりと言われたシンデレラはもう一度小さな声で「ごめんなさい」とつぶやきました。 かぐやはと言うと、割れた花瓶の破片を見つめ泣いていました。 シンデレラ「かぐやも・・・悪いことをしてしまったわね。私が片づけておくから」 そう言ってシンデレラは破片を取ろうと手を伸ばしました。 かぐや  「触らないで!いつも掃除する時は気をつけてって言っていたでしょう。シンデレラのばかっ」 白雪   「こんなに濡れちゃって・・・」 確かに花瓶を割ってしまったのも、人形を濡らしてしまったのもシンデレラのせいかも知れません。 でもそれは・・・。 シンデレラ「二人とも・・・わざとじゃないのよ?それに大切なものなら自分の部屋に置いておけばいいじゃないの。       掃除はいつも私任せで」 白雪   「それはシンデレラが好きでやっているのでしょ?」 かぐや  「白雪の人形はわかるけど、私の花瓶はシンデレラがここに置いていいって言ったのよ?」 白雪   「人形は・・・ってどういう意味よ!」 三人は言い合いになってしまいました。 そこへ騒ぎを聞きつけたお父さんがやって来ました。 お父さん 「どうしたんだい?そんなに騒いで」 かぐや  「聞いて、お父様。シンデレラがっ!」 白雪   「お父様ーかぐやがひどいこと言うの!」 シンデレラ「私は謝っているのにっ」 三姉妹に同時に話しかけられたお父さんは「いい加減にしなさい」と窘めます。 しかし、言い合いは収まるどころか悪化する一方です。 かぐや  「だいたいお父様がはっきりしないからいけないのよ!」 シンデレラ「かぐや?お父様は関係ないわ」 白雪   「なぁに、シンデレラはお父様の味方をするの?」 困り果てたお父さんは大声で一喝しました。 お父さん 「静かにしなさいっ!!そんなに気に入らないことがあるのなら、この家を出て自由に過ごせばいい。       三人とも出て行きなさいっ!!」 三姉妹は喧嘩をしたまま、家を追い出されてしまいました。 (暗転) 忘れられた塔の一室。 そこには一人の魔法使いが住んでいました。 その存在はほとんど知られていません。 魔法使いは日課であるように、大きな鏡に向かって語りかけました。 魔法使い 「鏡よ鏡。おとぎの国で一番美しいのは誰だ?」 すると鏡がパッと光り、娘らしき姿が映し出され無機質な声が答えます。 (それは・・・シンデレラと白雪とかぐや、姫と呼ばれる三姉妹です) 魔法使い 「またそれかっ!もう一度聞く」 (何度聞かれても、それは変わりません) 魔法使い 「三姉妹が生きている限り変わらないと言うことか・・・許せん!」 魔法使いは恨みをこめた瞳で鏡を見ると、ニヤリと笑って部屋を出て行きました。 (暗転) その頃、何も知らない姉妹は、それぞれ住むところを探していました。 シンデレラは白雪とかぐやを見送った後、どこへ行こうか考えてながら歩き出しました。 少し歩くと、どこか寂しいことに気付きました。 シンデレラ「可愛い妹達、そしてお父さん・・・本当はあんなことを言うつもりはなかったの。       でも戻るわけにも行かないし、まずは住むところを探さなくてはいけないわ」 自分を勇気づけるようにつぶやいた時、一匹の白ネズミがシンデレラの前を通り過ぎました。 シンデレラ「あら?こんなところに可愛らしいネズミだわ。どこへ行くのかしら?」 シンデレラはついて行くことにしました。 いつも歩いている畑通りを抜けたところで、それまで歩いていたネズミが急に走り出しました。 シンデレラは慌てて追いかけましたが見失ってしまいました。 シンデレラ「この先は森ね・・・。あら、あそこに見えるのは家かしら?」 ネズミは見失ってしまいましたが、住めそうな家をみつけたようです。 シンデレラ「まぁ、この家、私のラッキーアイテムのかぼちゃに似てるわ!!       誰も住んでいないのかしら?ドアは開くわね。掃除すれば住めそうだわ。ここにしましょう」 そうしてシンデレラは、森の手前で見つけた外見がかぼちゃのような緑の家に住むことにしました。 そこは以前、誰かが住んでいたのかも知れません。家具や食器まで生活に必要なものはほとんど揃っていました。 シンデレラは有り難く使わせてもらうことにしました。 幸い井戸もあり水も確保できました。 シンデレラ「まずは掃除ねっ。今度は何も落とさないように・・・」 シンデレラは掃除をするのが得意でした。 腕まくりをして埃まみれになりながら家をピカピカにしました。 シンデレラ「こんなものかしら?茶葉を見つけたしお茶にしましょう」 そして嬉しそうにお湯を沸かすと一息つくことにしました。 【トントン】 シンデレラが紅茶を飲んでいると扉を叩く音が響きました。 シンデレラ「嫌だわ、もしかしたらこの家の持ち主かしら・・・」 【トントン】 再び響きます。 シンデレラは仕方なく返事をしました。 シンデレラ「はぁい。あの・・・すみません。勝手に使ってしまって・・・」 【ガチャ】 言い終わる前にドアが開けられました。 そこに立っていたのは小柄で黒いマントを羽織った男の人でした。 魔法使い 「お前がシンデレラだな!」 いきなり自分の名前を言われシンデレラは驚きました。 こんな怪しい雰囲気の知り合いはいません。 この家の持ち主なら名前を知っているはずはないのです。 シンデレラ「あなたはこの家の持ち主なのですか?」 シンデレラは勇気を出して聞きました。 魔法使い 「僕は忘れられた塔に住む魔法使いだ。お前達三姉妹を探していた」 シンデレラ「魔法使い?」 この家の持ち主ではないことがわかってシンデレラはほっとしました。 しかし。 シンデレラ「三姉妹ですって!?それでは白雪とかぐやのことも?」 魔法使い 「そういうことだ。お前は間違いなくシンデレラってことか・・・それなら消えてもらおう。       目ざわりなんでね!」 シンデレラ「目ざわりって・・・私、あなたに何かしたかしら?」 「とぼけたって無駄だ。この国で一番美しいのは僕なのだからっ!」 そう言うと、魔法使いは杖を取り出し何やら呪文を唱えました。 シンデレラ「きゃぁ〜!!」 すると辺り一面が光に包まれ、シンデレラは眩しさのあまり魔法使いを突き飛ばし外に飛び出しました。 光がなくなると、さっきまでそこにあったはずの家が跡形もなく消えていることに気がつきました。 足元には魔法使いが倒れています。 魔法使い 「おのれ〜」 魔法使いの恨みのこもった声を聞いたシンデレラは、怖くなって森の方に走り出しました。 白雪かかぐやに会えることを願って・・・。 (暗転) さて、白雪の方はどうなったのでしょう。 二人と別れた後、白雪は一人森の中を歩いていました。 慣れ親しんだはずの綺麗な森・・・。 いつもだったらシンデレラやかぐやが一緒だったので怖くはなかったこの森も、さすがに一人だと心細いせいか、 なんだかちょっと怖く感じます。 白雪   「今更ながらにちょっと喧嘩別れしたの後悔してきた・・・。       ねぇhide様達、私どうなっちゃうんだろう・・・」 唯一家から持ってきた、大事な大事なhide人形七体に話しかける白雪。 hide人形達は白雪の話を無言で聞き続けます。 しばらく歩いていくと、広く開けた場所に出ました。 そこには木でできた小さなかわいらしい小屋と、大きなリンゴの木が一本たたずんでいました。 白雪   「すごーい!!可愛い小屋〜!!リンゴの木まである!!ここならかわいい私にピッタリの家だわ!!       よし、ココに決めた!ここに住もう!!」 こうして、白雪姫はリンゴの木がたたずむ小さな小屋に住む事にしました。 白雪   「さぁ、hide様達はここにいてね。私はこの小屋を綺麗にするから。ラララ〜♪」 hide人形達を窓際に置いて、鼻歌を歌いながら白雪姫は掃除を始めました。 【ガシャーン  ドーン  バタバタバタ  バシャーン  ・・・・・・】 掃除を始めて30分後、部屋の中は大変な事になっていました。 お皿は割れ、本は床へ落ち、水は零れ、白雪は埃まみれ・・・。 そう、白雪は掃除が大の苦手だったのです。 白雪   「・・・hide様、私もうダメかも。こんな時にシンデレラやかぐや達がいてくれたら・・・」 【コンコン】 その時でした。 誰かがドアをノックする音が聞こえました。 ゆっくりと、でも力強くドアを叩く音。 この小屋に白雪がいることを知っている人は誰もいないはず。 では、一体誰が・・・? 恐怖に怯える白雪。 目に涙を溜め込み、白雪は頭からクッションをかぶり、机の下に隠れました。 【ギィーッ】 ドアがゆっくり開いた音がしました。 誰かが小屋の中へ入ってきたのでしょうか・・・。 白雪   「怖い・・・誰?誰なの・・・?もう嫌!シンデレラ、かぐや!助けて・・・!」 【パッ】 シンデレラ「やっぱり白雪じゃないの。そんなところで何してるのよ。」 聞き覚えのある声に顔を上げると、そこにたたずんでいたのは、シンデレラでした。 なんと、ドアをノックし、入ってきたのはシンデレラだったのです。 シンデレラ「何?この汚い部屋は!あなたが掃除でもしようとして散らかしたんでしょうけど・・・。       あら、何泣きそうな顔してるのよ。もしかして、怖かったの?」 白雪の心を見透かしているかのように、笑みを見せるシンデレラ。 さすがお姉さんです。妹の性格は熟知しています。 白雪   「う、うるさいわね!どうせ私は掃除は苦手よ!!それに、怖くなんてなかったんだから。ちっとも!」 さっきはあんなに怯えていたくせに、強く見せようとする白雪。 シンデレラ「まぁ、そーゆうことにしておいてあげるわ」 優しいシンデレラは、これ以上白雪を弄るのはやめました。 白雪   「そんなことより、なんでシンデレラがここにいるのよ?あなたも自分の家を探していたはずでしょ?       見つからなかったの?」 シンデレラ「もちろん見つけたわ、立派な家を。でも悪い魔法使いに消されちゃって・・・。       森の中を彷徨っていたらここを見つけたの。       窓からhide人形が見えたから、もしかしてと思って、ノックしたってわけ。       そしたらあなたが怖がってて・・・ふふっ」 白雪   「もう!シンデレラうるさい!!」 【バタンッ】 その時です。 いきなりドアが開いたと思うと、そこには黒い服に身を包んだ人が、仁王立ちしていました。 とても怪しい感じがします。 絶対に友達はいないタイプです。 魔法使い 「ハーッハッハッハ!!!シンデレラ、逃がしはしないよ。ん?そこにいるのは白雪姫かい?       ってことは、ここはお前の家か?       はっ!この家も僕の魔法で消し去ってくれるわ!!それっ!!」 光。 重層化する光のカーテン。 どうしたことでしょう。 魔法使いが杖を振ると、あっという間に家は跡形もなく消え去ってしまいました。 一瞬の出来事でした。 白雪は何があったのかサッパリ分からないといった顔をしています。 シンデレラ「白雪の家まで・・・!なんてひどい事を!!」 魔法使い 「フン、知ったことではないな!」 シンデレラ「何て人なの・・・。とにかくここにいても仕方がないわ。かぐやの所へ逃げましょう!       たぶんあの子なら竹がある所よ。行くわよ!!」 シンデレラは白雪の手を取り、力強く走り出しました。 白雪は、ただただ、シンデレラに手を引かれ、走っていくのが精一杯でした。 一体この先、どうなってしまうのでしょうか・・・? (暗転) 二人は息を切らせながらかぐやの住む竹の家にたどり着きました。 シンデレラが思った通り、かぐやは竹林の近くに家を見つけていたようです。 それは柱や屋根、床に至るまで鮮やかな緑の竹を贅沢に使った立派な日本家屋でした。 シンデレラ・白雪「かぐや、かぐや〜!!」 慌ただしく戸を叩く二人。 かぐや  「何かしら?」 不機嫌悪そうに戸を開くかぐや。 その瞬間、戸を叩く勢い余った二人の拳がかぐやに直撃してしまいました。 【ガスッドスッ】 シンデレラ・白雪「・・・あ・・・っ」 かぐや  「私、まだ二人を許さないわ・・・」 眉間にしわを寄せ、二人を睨みつけるかぐや。 白雪   「もうそれどころじゃないのよっ」 シンデレラ「変な魔法使いにせっかく見つけた家を消されて・・・」 二人の言葉にキョトンとするかぐや。 シンデレラ「殺されるかと思ったわ」 かぐや  「殺されるって・・・何をしたの?」 かぐやはまだ状況がつかめません。 シンデレラ「その魔法使い、自分が一番美しくないと気が済まないみたいで・・・」 シンデレラの説明でなんとか把握したかぐやも、よくわからない魔法使いに腹が立ちました。 かぐや  「なんて酷いの・・・誰かから奪って得た美しさなんて、本当の美しさじゃないわ・・・」 漸く息を整え落ち着きを取り戻した二人を見上げると、三人の瞳がしっかりと合いました。 かぐや  「これはもう、けんかしてる場合じゃないわね・・・」 三人は頷きました。 三姉妹  「三人の力を合わせて戦いましょう!」 こうしてシンデレラ、白雪、かぐやの三姉妹は魔法使いとの決戦に備えます。   魔法使い 「ふはははは!見つけたよ!三姉妹!!」 どこからともなく響く声、それは魔法使いでした。 シンデレラ、白雪そしてかぐや達が辺りを見回すと三人の後ろに魔法使いは出て来ました。 魔法使い 「ちょっと三姉妹!!どけ!!」 シンデレラ「あっ、小さいから見えなかったわ」 白雪   「そうね。小さいから」 魔法使いは少し膨れながら杖を出しました。 そしてまた、姫たちも戦う構えを見せました。 魔法使い 「僕の魔法をうけてみろ!“フレイムライズ”」 辺りが赤や青、黄色などで激しく染まり上がって行きます。 シンデレラ「私たち、姉妹の力を思い知るといいわ!」 シンデレラは灰を魔法使いに向けて投げました。 それは見事というくらいまでに魔法使いに…いや、魔法使いの目にダイレクトに当たりました。 魔法使い 「目が・・・目がぁああああああ!!!」 白雪   「わ、私だって!」 かぐや  「私もやりますわ!!」 目を押さえながら悶え苦しむ魔法使いに、追い討ちをかけていくように白雪は木刀で、かぐやは竹で叩き始めました。 魔法使い 「痛いいたい!!このっ…“ダーカンブラック”」 かぐや  「え、暗いわっ」 白雪   「シンデレラ?何も見えませんわっ!」 辺りは急に真っ暗になり、暗さに目が慣れていなかったらしい三姉妹はさすがに焦りだしました・・・が。 かぐやは何を思ったか、近くにあった、たけのこを投げ始めました。 かぐや  「こちらかしらっあら、こちら!!」 白雪   「かぐやこっちには投げないでっ」 魔法使い 「ちょ!!!このかぐや、何投げ・・・っ!!」 シンデレラ「あ、かぐやそちらだわっ!!」 魔法使い 「しまっ・・・・・・!!!!」 そして辺りにまた光が戻ると魔法使いのローブはぼろぼろ、魔法使い自信も擦り傷だらけになっていました。 その魔法使いの足元には投げられていた、たけのこが大量に転がっていました。 かぐや  「うふふ、これで形勢逆転ですわね?」 白雪   「まだ、やるつもりなのかしら?」 シンデレラ「私たち姉妹の力を思い知りましたか!」 魔法使い 「くっ・・・くそーたけのこで・・・でも僕はまだ負けは認めないんだからな!!」 魔法使いはそれだけ言って走り去って行きました。 魔法使いに勝った三姉妹はかぐやが投げていた、たけのこを拾い集め、それをかぐやの竹で出来た家で ご飯にして食べたそうです。 そうして三姉妹は、時々魔法使いの襲撃を受けながらも仲良く暮らしました。 (めでたし、めでたし?) ****************************** ☆CAST☆ 湊 睦月    :シンデレラ  黒羽 総司   :白雪姫  釈迦如来 ジール:かぐや姫 村河 さよ   :魔法使い 葉月 聖    :お父さん・鏡の精(声)